改正入管法の最大のポイントは、就労可能な新たな在留資格「特定技能」が設けられたことです。
「特定技能」の新設は、中小企業を含む日本の企業が、生産性の向上や女性・高齢者の活用などの対策をしても、なお人手不足が解消できない特定の14業種について、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていくことを目的としています。
技能実習と特定技能の両方で対象となっている業種の場合、最長で10年外国人従業員に活躍してもらうことが可能です。
また、今後、現在は2業種にしか認められていない特定技能2号の対象職種が拡大される可能性もあります。その場合、特定技能1号から2号に移行できれば、更新すれば、在留期間の制限なく外国人従業員が就労できます。
技能実習生では習得している技能や日本語能力に不足があると考える場合は、技能実習からの移行だけでなく、特定技能の在留資格を得られる外国人だけを対象に求人募集をかけていくことも考えられます。
【特定技能1号】
○技能実習2号を修了または、技能と日本語能力の試験に合格すれば得られる。
○在留期間は通算5年(1年,6か月又は4か月ごとの更新,通算で上限5年まで)
○家族帯同は不可。
○対象は、14業種のみ。
介護、宿泊、外食、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、
素材形産業、産業機械製造、電気・電子情報関連産業、
飲食料品製造、ビルクリーニング、農業、漁業
○受入企業または登録支援機関による生活支援が必要。
【特定技能2号】
○特定技能1号よりさらに高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人に与える。
○更新可能、審査を通過すれば更新回数に制限なし(3年、1年又は6か月ごとの更新)。
○家族帯同も可。
○滞在期間は永住権取得の要件の一つである「5年の就労期間」に算入。
○対象業種は、2019年8月現在、建設、造船・舶用工業の2業種のみ
新たな在留資格「特定技能」
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
対象 | 技能実習2号終了または 技能と日本語能力試験に合格 |
熟練した技能を要する業務に従事。 技能試験合格 |
在留期間 | 通算5年 | 更新すれば制限なし。 |
対象業種 | 介護、宿泊、外食、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、素材形産業、産業機械製造、電気・電子情報関連産業、飲食料品製造、ビルクリーニング、農業、漁業 | 建設、造船・船用工業 |
家族帯同 | 不可 | 可(配偶者、子) |
生活支援 | 必要 | 必要なし |
特定技能1号において従事させることができる業務
業種 | 受入予定人数 | 従事させることができる業務 |
介護 | 60,000人 | ・身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴,食事,排せつの介助等)の ほか,これに付随する支援業務(レクリエーションの実施,機能訓練の補助等) (注)訪問系サービスは対象外 〔1試験区分〕 |
ビルクリーニング | 37,000人 | ・建築物内部の清掃 |
素形材産業 | 21,500人 | ・鋳造 ・鍛造 ・ダイカスト ・機械加工 ・溶接・金属プレス加工 ・工場板金 ・めっき ・アルミニウム陽極酸化処理 ・仕上げ ・機械検査 ・機械保全 ・塗装 [13試験区分] |
産業機械製造業 | 5,250人 | ・鋳造 ・鍛造 ・ダイカスト ・機械加工 ・仕上げ ・機械検査 ・機械保全 ・電子機器組立て ・塗装 ・鉄工 ・工場板金 ・めっき ・溶接 ・工業包装 ・電気機器組立て ・プリント配線板製造 ・プラスチック成形 ・金属プレス加工 [18試験区分] |
電気・電子情報関連産業 | 4,700人 | ・機械加工 ・金属プレス加工 ・工場板金 ・めっき ・仕上げ ・機械保全 ・電子機器組立て ・電気機器組立て ・プリント配線板製造 ・プラスチック成形 ・塗装 ・溶接 [13試験区分] |
建設 | 40,000人 | ・型枠施工 ・左官 ・コンクリート圧送 ・内装、表仕上げ・トンネル推進工 ・建設機械施工 ・土工 ・屋根ふき ・電気通信 ・鉄筋施工 ・鉄筋継手 [11試験区分] |
造船・舶用工業 | 13,000人 | ・溶接 ・塗装 ・鉄工 ・仕上げ ・機械加工 ・電気機器組立て[6試験区分] |
自動車整備 | 7,000人 | ・自動車の日常点検整備,定期点検整備,分解整備 [1試験区分] |
航空 | 2,200人 | ・空港グランドハンドリング(地上走行支援業務,手荷物・貨物取扱業務等) ・航空機整備(機体,装備品等の整備業務等) [2試験区分] |
宿泊 | 22,000人 | ・フロント,企画・広報,接客,レストランサービス等の宿泊サービスの提供 [1試験区分] |
農業 | 36,500人 | ・耕種農業全般(栽培管理,農産物の集出荷・選別等) ・畜産農業全般(飼養管理,畜産物の集出荷・選別等)[2試験区分] |
漁業 | 9,000人 | ・漁業(漁具の製作・補修,水産動植物の探索,漁具・漁労機械の操作,水産 動植物の採捕,漁獲物の処理・保蔵,安全衛生の確保等) ・養殖業(養殖資材の製作・補修・管理,養殖水産動植物の育成管理・収獲 (穫)・処理,安全衛生の確保等) [2試験区分] |
飲食料品製造 | 34,000人 | ・飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工,安全衛生)[1試験区分] |
外食 | 53,000人 | ・外食業全般(飲食物調理,接客,店舗管理) [1試験区分] |
(特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針 H30.12.25)
技能実習と特定技能1号との違い
技能実習(団体監理型) | 特定技能1号 | |
関係法令 | 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律 | 出入国管理及び難民認定法 |
目的 | 技能、技術又は知識の移転、国際協力 | 国内の不足する労働力を補充 |
受入可能国 | 中国、ベトナム、フィリピン、ミャンマー、タイ、ネパール、インド、インドネシア、ウズベキスタン、カンボジア、スリランカ、バングラデシュ、ペルー、モンゴル、ラオス の15か国 | ベトナム、ミャンマー、フィリピン、カンボジア、ネパール、モンゴル、スリランカ、インドネシア、中国 の9か国 |
対象業種 | 80業種、144作業※ | 上記14業種 |
募集の仕方 | 国内の監理団体を通じて現地の送出機関に募集 | 企業独自で募集 |
在留期間 | 最長で合計5年 技能実習1号:1年以内、技能実習2号:2年以内、技能実習3号:2年以内 |
通算5年 |
費用 | 監理団体への入会金、月額組合費 | 企業で生活支援する場合は必要なし。登録支援機関に生活支援を委託する場合は必要。 |
転籍・転職 | 原則不可 | 可能 |
外国人の技能水準 | なし | 相当程度の知識又は経験が必要 |
入国時の試験 | なし (介護のみ入国時N4レベルの日本語能力要件あり) |
技能、日本語能力を試験で確認(技能実習2号を良好に修了した者は試験等免除) |
※技能実習対象業種、作業の詳細は以下をご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/002.html
(厚生労働省)