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外国人雇用のチェックポイント

すでに外国人を雇用している場合、問題となるのは、

①労務管理上の問題

②定着、成長上の問題です。

 

まずは、外国人雇用について、主なチェックポイントを以下にまとめました。貴社は大丈夫でしょうか。なお、技能実習生の場合は別途注意点がありますが、まずは一般的によく問題となる点について列挙しています。

 

採用段階 在留外国人の場合は現在の在留資格と在留期限。
入社後の業務が適法にできる在留資格の取得、変更が可能か。
留学生の場合は資格外活動許可があるか。
上陸許可基準を満たしているか。
日本で生活できる日本語能力はあるか。
日本のビジネス上のルールについてある程度知っているか。
日本で働きたい目的は明確か。
入社段階 労働条件が書面やメール等で提示されているか。
最低賃金を下回っていないか。
外国人雇用状況届を提出しているか。
社会保険に加入しているか。
入社前に健康診断を受けているか。
入社後 在留資格に対応した業務を担当しているか。
在留期限を過ぎていないか。
安全衛生研修を実施しているか。
福利厚生制度を外国人にも利用させているか。
労働時間を守っているか。
時間外割増賃金を支払っているか。
セクハラ、パワハラ、人種差別、宗教差別などを行っていないか。
日本語や日本文化についての研修環境があるか。
各種届出を定期的にしているか。
外国人従業員が10名以上の場合、外国人労働者の雇用労務に関する責任者を決めているか。

 

 もし、上記チェックリストで「×」がついた場合、すぐに是正していきましょう。

 

労務管理上の注意点

 労務管理上、特に注意しなければいけないのは次の点です。

 ①労働時間(労働基準法関連)

労働時間に関しては、会社によっては日本人に対する違反も多いのではないでしょうか。故意でなくても、経営者の方や人事労務担当者の方の誤解や無知により、意図的ではなく、結果として違反状態になっているケースもあります。

  また、多忙で労働時間をうまく管理できていない企業様もとても多いです。

  労働時間に関する主なチェックポイントには以下のものがあります。

  ・所定労働時間は1日8時間、週40時間内か。

  ・従業員の出社退社時刻を正確に記録し、把握しているか。

  ・休憩時間を適切に与えているか(6時間勤務の場合45分、8時間勤務の場合1時間)。

  ・休憩時間上に業務を担当させて実質休憩をとらせていないことはないか。

  ・有給休暇を付与しているか。

  ・有給休暇を年に5日以上実際に取得させているか。

  ・36協定届を提出しているか。

  ・36協定届に記載した時間の範囲を超えて業務させていないか。

  ・週に1回、4週で4日以上休日を与えているか。

  その他、労働時間に関する労働法令による規制は多数あります。一度、専門家に就業規則や労働実態についてご相談され、少しずつ是正していくことをおすすめします。

  忙しくてなかなか手をつけられないかもしれませんが、アウトソーシングとして、弁護士の労務顧問をご活用ください。

 

 ②安全基準(労働安全衛生法関連)

  労災事故を防止するため、様々な義務が企業には課されています。

  業種によって適用される規制が細かく変わるため、自社に適用される規制を把握し、適切な措置を講じることが求められます。また、雇用主には、個別の細かい規制とは関係なく、従業員の安全に配慮する義務が課されていますので、常に、従業員が安全に働けるようにしていかなければいけません。

  これに反した場合、刑事罰や損害賠償、社会的評価の著しい低下などのリスクがあります。

  たとえば、以下のような点に注意が必要です。

  ・安全衛生教育を実施しているか。

  ・重機、機械、設備、有害物質の操作、取扱マニュアルを作成し、周知しているか(外国語に対応したものがあると良い)

  ・危険な場所での作業がある場合に、安全措置を講じているか。

  ・重機の通り道を確保しているか。

  ・無資格者に重機を使用させていないか。

  ・機械、重機を定期的に点検しているか。

   特に、自社で働く外国人従業員が理解できる程度の簡易な日本語か、もしくは母国語での説明、マニュアルなどが必要になります。

   

 ③割増賃金

  日本人の場合でも頻繁に問題になります。

  時間外労働については、実際の時間外労働時間分の割増手当を払うこと、割増率を正しく計算すること、この2点に気をつけていただければと思います。

 

 ④就業規則

  従業員が10名以上の企業様の場合、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

  また、作成しただけでは不十分で、従業員に周知することも必要です。

  特に外国人従業員は日本語だけだと理解が不十分な場合があるため、英語や従業員の母国語で就業規則を翻訳しておくことをおススメします。就業規則だけであれば、翻訳費用もそこまで高額ではありません。最初にきちんと外国人従業員に社内でのルールを理解してもらった方が、その後のトラブルを防止できます。

 

 ⑤労働条件の明示

  外国人従業員の場合は、在留資格の取得に必要なため、雇用契約書は作成していると思います。その中に賃金や労働時間、休暇などの労働条件を明示しているはずです。

  問題となるのは、そこで明示した労働条件と実態が異なる場合です。注意しましょう。

 

 ⑥賃金台帳

  賃金台帳は賃金の支払いを記録するものです。作成義務があり3年間保管しなければなりません。意外に作成していない企業様が多いのでご面倒でも作成しましょう。顧問税理士さんがいる場合は、税理士事務所で作成保管されていることもあります。その場合は、是非貴社でも保管するようにしましょう。

 

 ⑦健康診断

  入社時と年1回の健康診断受診は雇用主の義務になっています。忘れがちなので、時期を決め、必ず受診させるようにしてください。

 

 ⑧技能実習生の帳簿類の作成(技能実習生のみ)

  技能実習生を受け入れている場合は、各種帳簿類を作成し、保管しておかなければなりません。

技能実習生の管理簿

認定計画の履行状況に関する管理簿

技能実習生に従事させた業務、指導内容を記録した書類

その他法務大臣、厚生労働大臣が告示で定める特定の職種及び作業の場合は指定された書類

(企業単独型の場合は)入国前講習、入国後講習の実施状況を記録した書類

 

技能実習生に関する書類は、こちらからダウンロード、印刷できます。

OTIT外国人技能実習機構

https://www.otit.go.jp/youshiki/

 

以下の書式は、ベトナム語、中国語、インドネシア語、タガログ語(フィリピン)、英語、カンボジア語、モンゴル語、タイ語、ミャンマー語のものも準備されています。

技能実習生の履歴書

技能実習のための雇用契約書

雇用条件書

技能実習の期間中の待遇に関する重要事項説明書

技能実習生の申告書

技能実習の準備に関し本国で支払った費用の明細書

 

定着、成長上の注意点

 採用した人財を定着させ、成長していってもらうのは、相手が日本人であっても非常に大変なことです。

 定着、成長上の問題については、日本人と外国人に共通の対策と、外国人固有の対策が考えられます。

 

まず、日本人外国人共通の対策としては、

①企業のミッションやビジョンを明確にする。

②貴社に合った人事評価制度を作る。

③①と②を従業員に周知する。

④各種法令を守る。

⑤社内での円滑なコミュニケーション 

などが挙げられると思います。

 

 人事評価制度を作るのはとても難しいですが、経営者の方がどうしていまの業務をやってらっしゃるのか、何を大事にしているのかを、突き詰めて考えた結果が、貴社に合った人事評価制度になります。産みの苦しみはありますが、作成して、社内に周知させることができれば、人事評価制度自体が従業員を育ててくれる効果があります。

 

 次に、外国人固有の定着、成長上の対策としては、やはり日本語、日本文化への適応についての対策です。

 日本語の問題は、本人の意欲の問題も大きく関わってきます。もちろん働きながら日本語能力は向上しますが、採用の時点からある程度日本語能力があることを重視して採用することが重要です。言葉ができないことで、結局、定着、成長できなくなるリスクがあります。働きながら勉強する場合は、定評のある日本語学校に通わせ、日本語能力が向上したら待遇や地位が向上することを明示して、目的意識を高く持って勉強してもらいましょう。

 また、文化の問題は日本語能力以上に難しさがあります。食べ物や習慣など、外国人従業員に適応できないものがある場合は、強要しないようにしましょう。ただ、日本で働く以上、最低限の商慣習の常識や日常生活に必要な習慣は覚えてもらう必要があります。入社当初から少しずつ丁寧に説明することが大切です。

 言葉や文化に最初はうまく適応できなくても、周囲の人が丁寧に教える、外国人従業員の母国語や文化にも興味を持ち、それを披露する機会を設けることで、社内で外国人従業員が孤立しないでいられます。 

 社内の人的関係がうまくいっていれば、自然と日本語力や日本文化への適応もできてくるものです。 

 

 また、外国人従業員の場合、国籍にもよりますが、待遇や将来のキャリアプランを明示することが重要です。多くの諸外国では、転職は当たり前です。また、自身のステップアップも当たり前で、将来のキャリアの見通しが不透明な場合、雇用主への不信感が募り、転職、退職、失踪などの方向にいきやすいです。

  

終わりに

外国人を採用することは大変ですが、何回か経験するうちにノウハウができますし、専門家に相談しながら進めていけば、そこまで恐れることはありません。

しかし、大事なのは、採用した後です。これは、外国人に限らず、日本人であっても同じだと思います。せっかく、労力とコストをかけて採用したのに、その人が育たない、辞めてしまう、外国人であれば失踪してしまうような事態になっては元も子もありません。

外国人、日本人問わず、採用した人財が活躍し、労使間のトラブルのない環境を整備することが、経営者には求められます。一時的には労力やコストがかかりますが、結果的に、質の高い人財が集まり、定着し、会社を成長させていってくれます。

  たとえ日本人であったとしても、新社会人は会社に適応するのに時間がかかります。それが外国人であれば、家族や友人もいない、商慣習や生活習慣も異なる、言葉も違う環境で働いているのですから、どれだけ大きな不安やストレスを抱えているのでしょうか。

 経営者の方や従業員が、温かく、細やかな気配りで外国人を受け入れることで、外国人従業員の仕事へのモチベーションは大きく向上します。そのような社内体制を整備できる企業が、日本人も外国人も定着し、活躍し、企業として成長していきます。

 

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