外国人就労をさせる経営者が知っておくべき基本ルール
在留資格の基礎知識
外国人雇用を考える経営者の方は、まず「在留資格」を理解する必要があります。
「在留資格」とは外国人が日本で活動するための法的な地位を指します。適法に日本に滞在している外国人は何かの在留資格を持っています。よく「永住権」があるという表現を聞くことがあるかと思います。正確には「永住権」という在留資格は無く、その外国人が「永住者」などの在留資格を持っていることを指していることがほとんどです。
在留資格ごとに日本に在留中の活動範囲が定められており、外国人が就労するためには「就労が許可されている」在留資格をもっていなければなりません。
そのため、外国人を雇用する際には、在留カードなどを見て、当該外国人が就労可能か、可能だとしてどんな業務の就労が可能かを確認する必要があります。
就労可能な在留資格
① 資格の範囲内で就労が認められる在留資格
在留資格 | 該当例 | 就労 |
外交 | 外国政府の大使,公使等及びその家族 | ○ |
公用 | 外国政府等の公務に従事する者及びその家族 | ○ |
教授 | 大学教授等 | ○ |
芸術 | 作曲家,画家,作家等 | ○ |
宗教 | 外国の宗教団体から派遣される宣教師等 | ○ |
報道 | 外国の報道機関の記者,カメラマン等 | ○ |
高度専門職 | ポイント制による高度人材 | ○ |
経営・管理 | 企業等の経営者,管理者等 | ○ |
法律・会計業務 | 弁護士,公認会計士等 | ○ |
医療 | 医師,歯科医師,看護師等 | ○ |
研究 | 政府関係機関や企業等の研究者等 | ○ |
教育 | 高等学校,中学校等の語学教師等 | ○ |
技術・人文知識・
国際業務 |
機械工学等の技術者等,通訳,デザイナー,語学講師等 | ○ |
企業内転勤 | 外国の事務所からの転勤者 | ○ |
介護 | 介護福祉士 | ○ |
興行 | 俳優,歌手,プロスポーツ選手等 | ○ |
技能 | 外国料理の調理師,スポーツ指導者等 | ○ |
特定技能 | 特定産業分野※の各業務従事者 | ○ |
技能実習 | 技能実習生 | ○ |
※介護,ビルクリーニング,素形材産業,産業機械製造業,電気・電子情報関係産業, 建設,造船・舶用工業,自動車整備,航空,宿泊,農業,漁業,飲食料品製造業,外食業
②身分・地位に基づく在留資格⇒就労可能、活動に制限なし
在留資格 | 該当例 | 就労 |
永住者 | 永住許可を受けた者 | ○ |
日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者、実子、特別養子 | ○ |
永住者の配偶者等 | 永住者・特別永住者の配偶者、我が国で出生し、引き続き在留している実子 | ○ |
定住者 | 日系3世、外国人配偶者の連れ子 | ○ |
③指定される活動のみ就労可能な在留資格
在留資格 | 該当例 | 就労 |
特定活動 | 外交官等の家事使用人,ワーキングホリデー、卒業後就職活動を行う留学生、EPA協定に基づく看護師・介護福祉士候補生、建設分野の技能実習修了後の建設業務従事者(2020年まで)など | ○ |
就労できない在留資格
※ただし、資格外活動許可を得たものは許可の範 囲内での就労は可。
在留資格 | 該当例 | 就労 |
文化活動 | 日本文化の研究者等 | × |
短期滞在 | 観光客、親族の訪問、スポーツ、会議参加者等 | × |
留学 | 大学、専門学校、日本語学校等の学生 | × |
研修 | 研修生 | × |
家族滞在 | 就労資格等で在留する外国人の配偶者、子 | × |
在留資格を持たない外国人を就労させたり、在留資格に定められた範囲を超えた就労活動をさせたり、在留期限を超過している外国人を就労させたりしていると、「不法就労助長罪」として刑事罰に問われることになるので注意が必要です。
異文化理解と異文化コミュニケーション
外国人を雇用する際には、従業員としての日本人と外国人の違いを知る必要があります。違う国で育った外国人は当然、「文化」が違います。
しかし、相手は日本で働きたいと思って日本に来た人たちです。
日本語や日本社会について一定の興味関心があり、異文化を受け入れる覚悟もあります。
そのため、必要以上に違いばかりに目を向けるのではなく、同じ人として誠意をもって接することが大切になります。
また、ベトナム人だから○○、中国人だから○○といった決めつけも、外国人従業員との距離を大きくしてしまう原因になります。ヨーロッパやアメリカに行くと、日本人は勤勉で大人しく真面目と言われることもありますが、日本人の中にも怠け者や不真面目であったり、逆に積極的な人もいます。宗教や大事にしている価値観の違いにより、国による一定の違いはありますが、やはり個人による差が大きいです。
外国人を雇用する場合は、こういった個人差や国による差があることを前提に、「あうんの呼吸」ではなく、言葉や書面などではっきりと経営者や日本人従業員が考えていることを伝えていった方が外国人との円滑なコミュニケーションに役立ちます。
いろいろな違いがあっても、異国の地で暮らす外国人にとっては疎外感を感じることが一番つらいものです。普段から、社内でコミュニケーションを活発にして、互いの違いも含めて表現していくことが大切です。
たとえば、ビジネスにおいて大切となってくる文化の違いには以下のようなものがあります。
・宗教によって食べられないものがある。
・宗教によって、お祈りの場所、手などの洗浄場所の確保が必要。
・休暇を希望する時期の違い(旧正月など)
・国によっては契約書など書面の内容を非常に重視する(書面に書いてないことはやらない)。
・多くの国でははっきり言葉に出さないと相手に伝わらない(暗黙の了解、あうんの呼吸はNG)。
・名刺の渡し方が雑でもOKな国がある。
外国人雇用のリスクをなるべく少なくし、効果的なものにするためにも、在留資格の基本的な知識や異文化理解についても意識していきましょう。
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