国内の人手不足やインバウンド需要に伴い、日本国内の外国人労働者数は、年々かなりのスピードで増えています。
【出典:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況のまとめ(平成30年10月末現在)】
国は、更に外国人労働者を受け入れるため、入管法を改正し、2019年4月から新しい在留資格「特定技能」を盛り込んだ改正入管法が施行されました。今後5年間で約34万5000人の外国人労働者の受け入れを見込んでおり、外国人労働者の増えるスピードは更に速まる予定です。
この先、企業の成長は、外国人人財を含め、女性や高齢者など多様な人財、働き方を採用し、うまく活用できるかにかかっていると言っても過言ではありません。
実は、外国人労働者を雇用している企業のうち、その58.8%は従業員30人未満の企業です。
外国人労働者の雇用事業所の事業規模別の割合(平成30年)
事業所の規模 | 事業所数(割合) |
従業員30人未満 | 12万7226事業所(58.8%) |
従業員30~99人 | 4万096事業所(18.5%) |
従業員100~499人 | 2万5321事業所(11.7%) |
従業員500人以上 | 8546事業所(3.9%) |
不明 | 1万5159事業所(7%) |
【出典:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況のまとめ(平成30年10月末現在)】
今後、中小企業が持続的に成長するためには、外国人人財も含めた人事戦略を考えることが重要になってきます。
外国人を採用するメリットは、主に以下の3つと考えています
1 優秀な若手人材を確保しやすい。
2 グローバル展開の可能性が広がる。
3 多種多様な人材で社内が活性化し、新しいアイデアが生まれる。
- 優秀な若手人材を確保しやすい。
優秀な人材の確保は企業の成長に不可欠です。日本の労働力人口は減少していますので、優秀な人材の確保は年々難しくなっています。この傾向は出生率が改善しない限り止まりません。
一方で、日本に来て働きたいと考える東南アジアの若者は、自国で日本語や日本の企業文化を勉強し、意欲が高いのが特徴です。このような優秀で若い人材が日本での労働を希望していますので、相対的に優秀な若手人材を確保しやすくなっています。
多くの中小企業が外国人雇用に踏み切っていることを考えると、日本人のみを採用育成の対象と考えることは、経営上大きなリスクになります。
2 グローバル展開の可能性が広がる。
進出、取引したい国の外国人を採用すれば、言葉や文化に精通している有能な人財として活躍してくれます。
日本だけを市場にしていては成長規模に限界があります。
外国人人財を採用し、活躍してもらうことで、貴社の新たな可能性が広がります。
3 多種多様な人材で社内が活性化し、新しいアイデアが生まれる。
多様性のある組織が、単一的な組織より生産性が高いことは、最近よく知られることになりました。
外国人を受け入れることは、社内の活性化にもつながります。日本人だけでは生まれてこない発想や新しい仕事の取り組み方など、外国人人材から学ぶべき点が多くあります。
外国人だと、他の従業員も違いを受け入れやすく、寛容になる傾向があるため、社内の人間関係が良くなったという報告も聞きます。
このようなメリットのある外国人雇用ですが、一方で、日本人を雇う以上に気をつけなければいけないポイントが多数あります。
外国人雇用に関係する法律は、日本人従業員と同様の労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、最低賃金法、労働組合法、職業安定法などの労働関連法規に加え、出入国管理法、技能実習法といった入管関連法規もあります。法律だけでなく、各種省令、ガイドラインなどにも精通していなければなりません。
法令に違反すると、各種刑事罰(不法就労助長罪、資格外活動幇助罪、在留資格等不正取得罪、技能実習法違反罪、外国人雇用状況届出規定違反罪など)、各種行政処分(立入検査、改善命令、企業名の公表、技能実習計画の認定取消し、外国人の受入停止といった処分)といった制裁もあります。
平成29年の厚生労働省の調査報告によると、外国人技能実習生を受け入れている企業5966件に監督を実施した結果、70.8%にあたる4226件で労働基準法令違反が認められたということです。
法令違反が悪質と判断された場合は、刑事罰や企業名が公表されるというリスクがあります。
主な法令違反は、(1)労働時間(26.2%)、(2)使用する機械に対して講ずべき措置などの安全基準(19.7%)、(3)割増賃金の支払(15.8%)となっています。
このような法令違反は、日本を代表する大手企業でも起こっています。
たとえば、三菱自動車では、外国人技能実習生27人に、技能実習計画と異なる作業をさせたとして、技能実習計画の認定を取り消されました。
パナソニックも技能実習計画の認定を取り消されています。
両社は、5年間、技能実習だけでなく、2019年4月に導入された在留資格「特定技能」での受け入れもできなくなりました。
外国人雇用の全体をリスクマネジメントするには弁護士のアドバイスが必要です。
弁護士であれば、事前の外国人受入体制のチェック(法的に外国人の受け入れが可能な企業の体制かどうかのチェックが必要です。)、雇用契約書や就業規則の作成やチェック、労務問題の予防策、労務トラブル発生時の対応など、採用前から採用後にかけて労務全般の相談、対応ができます。
とびら法律事務所では、外国人労務チームが、外国人採用前から定着までトータルで関わり、必要なアドバイスをさせていただきます。
企業の持続的な成長に向けて、コンプライアンス体制を強化し、外国人を雇用定着する仕組みを整えていきましょう。